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信仰の望みと神の選び

主任司祭 ヨハネ・ボスコ 林 大樹


 昨年12月28日、いわゆる「宗教二世」の方々からの相談を含め、宗教に関する相談に対して、児童相談所等の虐待対応の現場において適切に対応することができるよう、厚生労働省において、「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」が作成されました。その中で心理的虐待として、次のように述べられています。

 「〜をしなければ/〜をすれば地獄に落ちる」、「滅ぼされる」などの言葉や恐怖をあおる映像・資料を用いて児童を脅すこと、恐怖の刷り込みを行うこと、児童を無視する・嫌がらせをする等拒否的な態度を継続的に示すことで、宗教活動等への参加を強制することや進路や就労先等に関する児童本人の自由な決定を阻害すること(保護者の同意が必要な書類への署名や緊急連絡先の記入の拒否等を含む。)は、いずれも心理的虐待又はネグレクトに該当する。

 入信志願式(洗礼志願式)から
司祭 (求道者の皆さん、)あなた(がた)は入信の秘跡、洗礼・堅信・聖体を受けることを心から望みますか。
答  はい、望みます。

 堅信式、結婚式、叙階式でもカトリック教会は自ら望んでいる意志を確認します。あの人は聖書をよく勉強しているから強制的に信者にしたり、あの男性とあの女性はお似合だから強制的に結婚させたり、あの独身男性は善き人だから強制的に司祭にさせたりすることはありません。カトリック教会はあくまで本人の自由意志で信仰を選ぶあるいは秘跡を受けることを確認しています。幼児洗礼は親が洗礼を望んでいる意志を確認します。幼児洗礼を受けた本人は、堅信式のとき、大人の信仰者として生きる決意、自ら堅信を望んでいる意志を確認します。また、本人が嫌がっているのに無理やり親がミサに連れて来て聖体拝領をしてもそこには信仰の喜びはありません。
 「求道者とともに歩む信仰の道 求道者養成の手引きとなる『成人のキリスト教入信式』儀式書の解説」(横浜教区典礼委員会編 女子パウロ会発行 48−49頁)は、次のように提案をしています。

 従来「洗礼志願式」と呼ばれているこの儀式(入信志願式)の名称を再考する必要があります。「志願式」という呼び方は、「志願する」ことが求道者の主体的な行為であることから、神の働きよりも求道者の意志が強調されているような印象を与えてしまうので、適切ではありません。この点を明確にするため、フランス語版では「あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ」というキリストのことばに基づいて、この儀式(入信志願式)を「決定的呼び出し」という名称にすることによって、神の選びを強調しています。日本語訳の場合も、ラテン語の原文「electio」を直訳して「選びの式」と呼ぶほうが、よりふさわしいと思われます。
 入信志願式に際して教会は、代父母と共同体に向かって問いかけ、本人が神の選びに忠実にこたえようと努力していることを確かめて、(「求道者」から)「志願者」として受け入れることを宣言します。この問いかけの内容は次のとおりです。
 ・福音的価値観に基づいて行動し、隣人愛の実行に励んでいるか。
 ・キリスト教について、この段階で必要とされる知識を十分に習得しているか。
 ・共同体と積極的にかかわっているか。
 ・入信の秘跡を受けたいという明白な意志があるか。


 カトリック教会の信者は、強制ではなく、あくまで本人の自由意志に基づいて、信仰者として生きることを望みました。また、それを誇りとしています。信仰の望みと神の選びとがつながっていること―このすばらしい恵みを感謝したいと思います。
 ※ローマ儀式書によると、入信志願式は司教の司式によって行うことになっています。それは司教が入信の秘跡執行に伴う最高責任者であるからです。また、求道者は司教の司式による志願式にあずかることによって、小教区の共同体を超えるカトリック教会、すなわち全世界におよぶ普遍的教会の信者になることをより深く実感できるようになるからです。横浜教区では、今年は2月26日(日)四旬節第1主日、各小教区の午前中の主日ミサの中で「司教司式の入信志願式に求道者を派遣する式」を行い、午後、藤沢教会において「司教司式の入信志願式」を行う予定です。

※ 注(Web担当者より)
本文中で斜字(イタリック)にしている部分は、原文では文字が四角で囲まれていますが、Web上でそれは難しいので、斜字で代用させていただきました。ご容赦を。
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